まいぷれホーチミン編集部
ベトナム進出の成功率を上げたい。そう思わない日本企業はいないのではないでしょうか?
日本で評価されている商品やサービスでも、ベトナムへ持ってくれば、そのまま売れるとは限りません。
顧客が重視する価値、意思決定をする相手、営業の進め方、信頼関係の築き方。日本とベトナムでは、ビジネスの前提が大きく異なります。
こうした違いを理解し、日本企業のベトナムでの営業活動を支援しているのが、Real Gainです。
同社は、日系企業向けの営業代行・営業コンサルティングと、日本メーカーの測定器や産業機械を輸入販売する商社事業を展開しています。
今回は、代表のHưng(フン)さんに、創業の背景やベトナム市場で成果を出すために必要な考え方を聞きました。
東京での経験を、ベトナムで生かしたい
フンさんは、東京で約6年間働いた後、長期休暇を利用して東南アジアを旅行しました。
旅の最後にベトナムへ戻った時、街の活気や成長の速さ、人々のエネルギーに引かれたといいます。「自分もベトナムで何かに挑戦したい」そう考え、日本の会社を退職しました。
ただし、すぐに会社を始めたわけではありません。
約1年間、自分には何ができるのかを考え続けました。
日本で培った営業経験、日本語力、ベトナム人としての現地理解。この三つを組み合わせ、日本企業とベトナム企業をつなぐ会社を作ろうと決めました。
「日本の良い商品やサービスをベトナムへ広げたい。日本企業の成長を支援することが、ベトナムの経済や雇用にもつながると考えました」
こうしてReal Gainは誕生しました。
日本式の営業を、そのまま持ち込んでも売れない
Real Gainが営業支援で重視しているのは、日本の営業方法をそのまま再現することではありません。
ベトナム市場に合わせて、売り方そのものを変えることです。
フンさんが例に挙げたのが、工場で使用するオイル処理機械です。
この機械を導入すれば、長期的には大きなコスト削減が期待できます。
日本企業であれば、「1年間でコストを半分にできます」という説明が有効です。
しかし、ベトナム企業では「来月、いくらコストが下がるのか」が重視される場合があります。長期的な利益だけを説明しても、すぐには購入につながりません。
そこでReal Gainは、営業先を購買担当者や技術担当者だけに限定せず、経営者や管理責任者へ広げました。
さらに、資料で説明するだけではなく、デモ機を工場へ設置し、1か月から3か月ほど実際に使ってもらいます。
効果を体感し、納得してもらってから購入につなげるのです。
「日本では良い商品でも、ベトナムで売れるとは限りません。誰に、どのように伝えるか、コミュニケーションの戦略や施策まで変える必要があります」
日本の商品を紹介することではなく、ベトナムで売れる形へ変えること。それが、Real Gainの役割だとフンさんは語ります。
メールを送るだけでは、営業代行とは呼ばない
Real Gainの営業支援は、戦略を提案して終わるものではありません。
メール、電話、Zalo、展示会、飛び込み営業、紹介、会食、価格交渉、契約支援まで、必要な活動を一貫して行います。
現在のベトナムでは、日系工場であっても購買や採用の責任者がベトナム人へ移行しています。
以前のように、日本人担当者へ日本語で提案すれば商談が進むとは限りません。
ベトナム人担当者との関係を築き、現地の商習慣に合わせて営業を進める必要があります。
「営業コンサルティング会社はありますが、現場へ入り、飛び込み営業や契約交渉まで一緒に行う会社はまだ多くありません」
Real Gainは、結果が出るところまで伴走する実働型の営業会社を目指しています。
二つの事業は、別々ではない
Real Gainのもう一つの事業が、日本メーカーの測定器や産業機械を扱う商社事業です。
営業代行と商社。一見すると異なる事業に見えますが、実際には深くつながっています。
営業代行を通じて、さまざまな業界の顧客と接点を持つ。
ベトナム企業が何を求めているのかを知る。
日本の商品が売れない理由を分析し、販売方法を改善する。
その活動によって、顧客ネットワーク、業界知識、商談データ、営業人材が社内に蓄積されます。
その力を、自社の商社事業にも生かしているのです。
測定器や産業機械は専門性が高いため、社内では毎週研修を行っています。
日本の測定器商社で長く働いた経験を持つスタッフを中心に、商品知識や提案方法を共有し、顧客からの質問に対応しながら専門性を高めています。
将来的には機械だけでなく、食品や水産物なども含め、日本の商品を幅広くベトナムへ届ける商社へ成長したいと考えています。
創業当初、5人が1週間で辞めた
Real Gainの成長は、決して順調なものではありませんでした。
フンさんが最も苦労したのは、人材採用と組織づくりです。
創業当初は、給与や評価制度をどのように設計すればよいのか分からず、会社のビジョンも十分に伝えられていませんでした。
採用した5人が、約1週間で全員辞めたこともあります。
営業代行や測定器販売は専門性が高く、一から教育しなければなりません。
時間をかけて仕事を教えても、できるようになった頃に辞めてしまう。顧客情報を持ち出されたり、退職時の報酬をめぐって問題になったりしたこともありました。
それでもフンさんは、ベトナムで事業を成功させるために最も重要なのは「人」だと話します。
「ベトナムでは、人財が全てです。信頼できる社員やパートナーを選ぶことで、ベトナム進出の成功率は大きく変わります」
自分自身も、大きく始めて失敗した
フンさんは、日本企業に対して「最初から大きく投資しない方がよい」と伝えています。
この考えは、他社の失敗を見て得たものだけではありません。
フンさん自身も、創業初期に同じ失敗を経験しました。
安定した契約や売上がない段階で、良いオフィスを借り、多くのスタッフを採用しました。
これから売上が増えると考え、固定費を先に膨らませてしまったのです。
しかし、売上は想定通りには伸びませんでした。
資金が足りなくなり、採用した社員に辞めてもらうことになりました。
「最初は小さなオフィスやレンタルオフィスでよかった。自分と数人で始めて、安定した売上が立ってから人を増やすべきでした」
フンさんは、失敗を完全に防ぐことはできないと話します。
重要なのは、失敗しても再び立ち上がれる規模で始めることです。
小さく市場を試し、顧客を見つけ、売れることを確認してから投資を増やす。
一方で、資金力やブランド力を持つ大企業であれば、最初から大きく投資し、市場シェアを取りにいく戦略もあります。
企業の規模や資金力によって、正しい戦い方は変わります。
ベトナム進出で失敗する二つのパターン
フンさんが見てきた日本企業の失敗には、二つの共通点があります。
一つ目は、短期間の視察だけでベトナム市場を判断し、大きな投資をすることです。
顧客は誰か、価格はいくらか、どのように販売するのかを十分に検証しないまま、店舗やオフィスを構え、人を採用する。
結果として、固定費だけが増えてしまいます。
二つ目は、現地パートナーへすべてを任せることです。
営業、採用、資金管理、経営判断まで任せきりにすると、日本側が状況を把握できないまま資金だけが減っていくことがあります。
「信頼できるパートナーを選ぶことは重要です。ただし、信頼することと、すべてを任せることは違います」
現地の力を活用しながらも、日本側が責任を持って数字や活動を管理する必要があります。
成果が見込めない案件は受けない
Real Gainには、さまざまな企業から営業支援の相談が寄せられています。
しかし、すべての依頼を受けているわけではありません。
ベトナム市場へ参入する時期ではないと判断した場合は、「今は進出しない方がよい」と伝えます。
Real Gainよりも他社の方が適している場合は、別の企業を紹介することもあります。
契約を獲得することよりも、顧客へ成果を提供できるかを優先しているからです。
会社名の「Real Gain」には、同社の理念が込められています。
Real Action.
Real Result.
Real Value.
行動し、結果を出し、本当の価値を提供する。
言葉だけではなく、現場で実行し、成果に向き合うことがReal Gainの姿勢です。
日本とベトナムの間で、本当に売れる仕組みを作る
現在、Real Gainは新しい案件を無理に増やすのではなく、既存案件で確実に成果を出し、組織の基盤を整えることを優先しています。
営業人材の採用と教育、報酬制度、社内ルール、税務管理、CRMなどの営業管理システム。
これらを整えた上で、次の拡大へ進む方針です。
今後は北部にも拠点を設け、製造業、商社、水産業に加え、建設、食品、観光、アニメ、不動産などへ営業支援を広げていきます。
日本には、優れた商品やサービスが数多くあります。
しかし、品質が高いだけではベトナムで売れるとは限りません。
市場を知り、顧客を見つけ、現地に合った方法で伝え、信頼関係を築く。
Real Gainは、日本とベトナムの間に立つだけではなく、売れない理由を見つけ、売れる仕組みを現場で作り上げ、企業の成長を支える会社です。
フンさん自身の失敗と経験から生まれた営業支援は、日本企業がベトナム市場で遠回りを減らすための、実践的な力になっています。
| 名称 | まいぷれホーチミン編集部 |
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